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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(ク)6号 決定

主文

本件を札幌高等裁判所に移送する。

理由

抗告人を相手方とする札幌区裁判所昭和一七年(ミ)第九三号金銭債務臨時調停事件において同裁判所が昭和一八年五月三一日為した金銭債務臨時調停法第七条による裁判に対して抗告人から札幌地方裁判所に即時抗告の申立を為し同裁判所は昭和一八年八月一七日抗告を棄却する決定を為し其の決定は確定した。其の後昭和一九年一二月一六日抗告人から札幌区裁判所に対し右事件について再審の申立を為したが同裁判所は抗告棄却の決定があり之が確定したのであるから右再審申立事件は札幌地方裁判所の管轄に属するものとして昭和二二年四月二六日之を札幌地方裁判所に移送し、同地方裁判所は昭和二二年一〇月二一日再審申立を却下する決定を為した。それでその決定に対し抗告人から昭和二二年一一月一日抗告の申立を為したのが本件抗告である。

ところで、右再審申立の却下の決定は札幌地方裁判所が第二審裁判所として為した抗告棄却の決定に対する再審事件として第二審の訴訟手続に従つて為した決定であるから其の決定に対しては法令に違背したることを理由とする場合には裁判所法第一六条第二号により高等裁判所に抗告することができるのであり、斯様に不服を申立てることができる場合には、たとい原決定において法律命令規則又は処分が憲法に適合するかしないかについてした判断が不当であることを理由としても日本国憲法の施行に伴う民事訴訟法の応急的措置に関する法律第七条による抗告の申立は許されないのである。従つて前記再審申立の却下決定に対する抗告は管轄高等裁判所である札幌高等裁判所の管轄に属するもので最高裁判所は裁判権を有しないものであるから、民事訴訟法第三〇条に則り本件を札幌高等裁判所に移送すべきものとして主文の通り決定する。

以上は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 塚崎直義 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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